
迫力ある一人称視点の映像、レースのようなスピード感、映画のように滑らかな空撮――FPVドローンは、これまでの「ただ撮るだけ」のドローン体験を一変させます。
一方で、機材選びや法律・免許のルールは少し複雑で、不安を感じる人も多いはず。
本記事では「何から始めればいいか」「免許は本当に必要か」を、最新の制度や公的情報を踏まえてやさしく整理し、最短ルートで安全&合法にFPVを楽しめるようになるための道筋を解説します。
1. ドローンFPVとは?始め方の前に知っておきたい基本知識

1-1. FPV(First Person View)の仕組みと魅力
FPVとは「First Person View(ファースト・パーソン・ビュー)」の略で、一人称視点という意味を持ちます。
私が初めてFPVゴーグルを装着した時、まるで自分自身が空を飛んでいるような感覚に心が躍りました。
専用ゴーグルやモニターを通して、ドローンのカメラが捉える映像をリアルタイムで見ながら操縦するんです。
仕組みとしては、ドローン側に搭載された映像送信機(VTX)が5.7〜5.8GHz帯の電波を使って映像を送信し、操縦者側の映像受信機(VRX)がそれを受け取ります。
この映像伝送システムによって、遅延の少ない臨場感あふれる操縦体験が実現されているんですね。
最近では無線LANを活用した2.4GHz帯のドローンも増えていますが、レースやダイナミックな撮影を楽しむなら、やはり5.7〜5.8GHz帯の本格的なFPVシステムがおすすめだと私は考えています。
1-2. 通常のドローン(空撮機)との違いを比較
通常の空撮用ドローンとFPVドローンは、操縦の仕方そのものが大きく異なります。
一般的なDJI製ドローンなどは、機体を目視しながら手元のモニターで構図を確認する「目視内飛行」が基本です。
一方FPVドローンでは、操縦者が機体を直接見ることなく、ゴーグルに流れてくる映像だけを頼りに操縦します。
これは航空法上「目視外飛行」に分類され、特別な許可が必要になるケースが多いんです。
また、機体の構造も異なります。
FPVドローンの多くは自作やカスタマイズが前提で、パーツを組み合わせて自分好みの機体を作り上げていきます。
私自身も最初はRTF(Ready to Fly)キットから始めて、徐々にパーツの交換やカスタマイズを楽しむようになりました。
1-3. FPVで実現できること(レース・フリースタイル・シネマティック撮影)
FPVドローンの活用シーンは驚くほど多彩です。
代表的なのが「ドローンレース」でしょう。
障害物をすり抜けながら、時速150kmを超えるスピードで疾走する迫力は、まさに新時代のモータースポーツと言えます。
「フリースタイル」と呼ばれる分野では、アクロバティックな技を組み合わせて、まるでスケートボードの空中版のようなパフォーマンスを披露します。
ロールやフリップといった技を駆使した映像は、SNSでも大きな注目を集めていますね。
そして近年注目されているのが「シネマティック撮影」です。
映画やCMで見るような、建物の中を縫うように飛び回る滑らかな映像は、FPVドローンならではの表現だと私は感じています。
通常のドローンでは不可能なアングルや動きが実現できるため、映像制作の現場でも需要が高まっているようです。
2. ドローンFPVを始めるために必要な機材一式

2-1. 機体の種類と選び方
2-1-1. 一体型RTFキット(DJI Avataなど)
初めてFPVに挑戦する方には、一体型のRTFキットが最適だと考えられます。
DJI Avataに代表されるこのタイプは、機体・送信機・ゴーグルがセットになっており、箱から出してすぐに飛ばせる手軽さが魅力です。
私が初心者の方におすすめする理由は、複雑な設定が不要で、メーカーのサポートも充実しているからです。
ただし、価格は10万円を超えることが多く、初期投資としてはやや高めになります。
それでも、安全性と使いやすさを考えると、決して高すぎる買い物ではないと感じています。
2-1-2. Tiny Whoop / CineWhoop(小型機)
Tiny WhoopやCineWhoopと呼ばれる小型機は、室内でも安全に飛ばせる手のひらサイズのFPVドローンです。
プロペラガードが付いているため、壁にぶつかっても機体が壊れにくく、練習機として最適だと言えるでしょう。
価格も比較的手頃で、2〜3万円程度から入手できる点も初心者に優しいですね。
ただし、屋外での撮影には風に弱いという弱点があるため、用途を考えて選ぶ必要があります。
2-1-3. レース・フリースタイル用自作・BNF機
本格的にFPVを楽しみたい方は、自作機やBNF(Bind-N-Fly)機に挑戦することになります。
自分で選んだフレーム、モーター、フライトコントローラーなどを組み合わせて作る機体は、まさに自分だけのオリジナルです。
カスタマイズの自由度が高い反面、電子回路やプログラミングの知識が求められるため、ハードルは高めです。
2-2. 送信機(プロポ)の選び方と主要メーカー
送信機、いわゆるプロポは、ドローンを操縦するための必須アイテムです。
主要メーカーとしては、RadiomasterやFrSky、Futabaなどが有名で、それぞれに特徴があります。
選ぶ際のポイントは、チャンネル数、通信プロトコル、画面の有無などです。
価格帯は1万円台から5万円以上まで幅広く、予算に応じて選べるのも魅力です。
2-3. バッテリー(LiPo)と充電器の基礎知識
FPVドローンで使用するバッテリーは、主にリチウムポリマー(LiPo)バッテリーです。
軽量で高出力なのが特徴ですが、取り扱いを誤ると発火の危険性があるため、私は常に慎重に扱っています。
バッテリーの容量は「mAh(ミリアンペアアワー)」で表され、数値が大きいほど飛行時間が長くなります。
ただし、その分重量も増えるため、機体の性能とのバランスが重要になってきます。
充電器は必ずLiPo対応のものを選びましょう。
安全のため、充電中は目を離さないようにしています。
2-4. 予備プロペラや工具など、あると便利なアクセサリー
FPVドローンを始めると、予備パーツの重要性に気付かされます。
特にプロペラは消耗品なので、必ず複数セット用意しておくべきです。
工具類では、六角レンチセット、ドライバーセット、はんだごてなどが必須です。
フィールドでの簡単な修理や調整に対応できるよう、持ち運び用の工具ケースを用意しておくと便利だと感じています。
その他、バッテリーチェッカー、テスター、テープ類なども揃えておくと、トラブル時に慌てずに済みます。
最初から全て揃える必要はありませんが、徐々に必要なものを追加していくのが賢い方法でしょう。
3. FPVゴーグルの選び方|アナログとデジタルの違いを徹底解説

3-1. アナログFPVゴーグルの特徴・メリット・デメリット
アナログFPVゴーグルは、伝統的なアナログ方式で映像を伝送するシステムです。
最大のメリットは、映像の遅延が非常に少ないこと。
レースなどでコンマ数秒を争う場面では、この遅延の少なさが重要になってきます。
また、価格が比較的安価で、1万円台から購入できるモデルもあります。
私が最初に購入したのもアナログゴーグルで、FPVの世界に気軽に入れたのは価格の手頃さのおかげでした。
一方、デメリットとしては画質の粗さが挙げられます。
ノイズが入りやすく、遠距離では映像が乱れることもあります。
ただ、多くのFPVパイロットは「アナログの味わい」として、この独特な映像を楽しんでいるようです。
3-2. デジタルFPVゴーグルの特徴・メリット・デメリット
デジタルFPVゴーグルは、DJI FPVシステムに代表される高画質な映像伝送システムです。
HD画質の鮮明な映像が得られるため、シネマティック撮影には最適だと言えるでしょう。
私がデジタルゴーグルを初めて使った時、その映像の美しさに驚きました。
細部まではっきり見えるため、障害物の認識や距離感の把握がしやすくなります。
ただし、デメリットとして映像の遅延がアナログより若干大きいこと、そして価格が高額であることが挙げられます。
DJI FPVゴーグルは5万円以上することが多く、初期投資としては負担が大きいかもしれません。
また、使える機体が限定される点にも注意が必要です。
3-3. 初心者におすすめのゴーグルは?予算と目的別の選び方
初心者の方には、まず予算と目的を明確にすることをおすすめします。
もし予算に余裕があり、高画質での撮影を重視するなら、DJI製のデジタルゴーグルが良い選択でしょう。
一方、とりあえずFPVを体験してみたい、レースに興味があるという方には、2〜3万円程度のアナログゴーグルが最適だと考えられます。
Fat Shark(ファットシャーク)やSkyzone(スカイゾーン)といったメーカーのエントリーモデルがおすすめです。
私の経験から言えば、最初はレンタルや知人から借りて実際に試してみるのが一番です。
ゴーグルは長時間装着するものなので、フィット感や視野角など、個人の好みが大きく影響します。
購入前にしっかり確認することが、後悔しない選択につながると感じています。
4. 【重要】ドローンFPVに必要な免許・資格・許可は?法律と申請のポイント

4-1. 航空法における「目視外飛行」とFPVの位置づけ(屋外・100g以上)
FPVドローンの操縦は、航空法上「目視外飛行」に該当します。
これは操縦者が機体を直接肉眼で見ずに操縦する状態を指し、屋外で100g以上のドローンを飛ばす場合、原則として国土交通大臣の許可・承認が必要になるんです。
私が最初にこの事実を知った時は正直驚きました。
ゴーグルを着けて飛ばすというだけで、こんなに複雑な手続きが必要だとは思っていなかったからです。
しかし、空の安全を守るためには必要なルールだと、今では理解しています。
目視外飛行が規制される理由は、周囲の状況把握が困難になり、他の航空機や人への衝突リスクが高まるためです。
ゴーグルの映像では前方しか見えず、側方や上方から接近する物体に気付きにくいという課題があるんですね。
4-2. 国家資格(無人航空機操縦者技能証明:一等・二等)とFPVの関係
2022年12月から始まった国家資格制度「無人航空機操縦者技能証明」は、FPV飛行にも大きく関係してきます。
この資格には一等と二等があり、それぞれ可能な飛行範囲が異なります。
二等資格を取得すると、特定飛行(人口集中地区での飛行、夜間飛行、目視外飛行など)の許可申請が簡略化されます。
つまり、FPV飛行の許可申請がスムーズになるわけですね。
私の知人も二等資格を取得してから、申請手続きがぐっと楽になったと話していました。
一等資格になると、レベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)が可能になりますが、これは主に業務用途を想定したもので、趣味のFPVでは二等資格で十分だと考えられます。
ただし、将来的に仕事でFPVを活用したい方は、一等取得を視野に入れておくと良いでしょう。
4-3. 機体登録とリモートID搭載義務(100g以上の無人航空機)
2022年6月20日から、100g以上の全てのドローンに機体登録とリモートID機能の搭載が義務化されました。
これは空の安全を確保するための重要な制度で、いわば「空のナンバープレート」のようなものです。
リモートIDとは、機体の識別情報を電波で遠隔発信する装置のこと。
飛行中のドローンの位置や所有者情報を地上から把握できるようになり、トラブル時の迅速な対応が可能になります。
私もFPV機体に外付けのリモートID機器を取り付けましたが、重量が10g程度と軽量で、飛行性能への影響はほとんど感じませんでした。
リモートIDを搭載せずに飛行させると、50万円以下の罰金または1年以下の懲役が科される可能性があるため、必ず対応しましょう。
機体登録はオンラインの「DIPS 2.0」というシステムから行います。
登録料は900円(オンライン申請の場合)と比較的手頃で、手続き自体も30分程度で完了します。
詳しくは国土交通省の無人航空機登録ポータルサイトをご確認ください。
4-4. 目視外飛行に必要な許可・承認と、国家資格取得による申請免除・簡略化
FPVドローンで屋外飛行する際は、「目視外飛行」の許可・承認申請が必要です。
申請はDIPS 2.0を通じて行い、通常10開庁日以上の審査期間が必要とされています。
ただし、二等以上の国家資格を保有し、機体認証を受けたドローンを使用する場合、一部の飛行では申請が不要または簡略化されます。
これは2022年の制度改正で導入された規制緩和措置で、ドローンの利活用促進を目的としています。
具体的には、無人地帯での目視外飛行については、国家資格保有者であれば申請が原則不要となるケースがあります。
ただし、第三者の立ち入り管理などの条件を満たす必要があるため、詳細は国土交通省のガイドラインを確認することをおすすめします。
4-5. 屋内FPV飛行時のルール(航空法・登録・許可の扱い)
実は、完全な屋内でのFPV飛行には航空法の規制が適用されません。
私も最初の練習は、自宅の広いリビングや体育館を借りて行いました。
屋内であれば、機体登録やリモートID搭載も不要なんです。
ただし、「屋内」の定義には注意が必要です。
四方と天井が完全に囲まれた空間のみが屋内とみなされ、屋根だけの建物や網で囲まれた空間は屋外扱いになる可能性があります。
判断に迷う場合は、事前に管轄の航空局に確認するのが確実でしょう。
また、屋内飛行でも施設の管理者の許可は必要です。
安全第一を心がけることが、FPVを長く楽しむ秘訣だと感じています。
4-6. アマチュア無線4級免許は取得すべきか(日本の電波法との関係)
FPVドローンで5.7〜5.8GHz帯の電波を使用する場合、電波法上の手続きが必要になります。
趣味目的なら「第四級アマチュア無線技士」、業務目的なら「第三級陸上特殊無線技士」の資格が求められるんです。
私自身も第四級アマチュア無線技士の資格を取得しましたが、試験の難易度は中学生程度の知識があれば合格できるレベルです。
勉強期間は1〜2週間程度で、受験料も5,000円程度と手頃でした。
ただし、資格取得だけでは不十分で、無線局の開局申請も必要になります。
これには技適マークのない機器の場合、JARD(日本アマチュア無線振興協会)などの第三者保証機関から機器の保証を受ける必要があるため、やや手間がかかります。
2.4GHz帯の無線LANを使用するDJI製のFPVドローンなら、これらの無線免許は不要です。
「とりあえずFPVを体験してみたい」という方は、まずDJI Avataのような免許不要のシステムから始めるのも一つの選択肢だと考えられます。
5. 初心者向けドローンFPVの練習方法ステップガイド
5-1. ステップ1:フライトシミュレーターで基本操作を習得
FPV初心者の方に私が最初におすすめするのは、フライトシミュレーターでの練習です。
実機を飛ばす前にシミュレーターで基本を身につけることで、機体を壊すリスクを減らせますし、何より練習コストがかかりません。
人気のシミュレーターとしては、「Liftoff」や「DRL Simulator」、無料の「FPV Freerider」などがあります。
シミュレーターでは、離陸・ホバリング・前後左右の移動・旋回といった基礎から、ゲートをくぐるような応用的な動きまで練習できます。
最初は墜落ばかりで心が折れそうになりましたが、実機で飛ばす前にシミュレーターで十分練習しておいて本当に良かったと感じています。
5-2. ステップ2:安全な屋内環境での実機練習
シミュレーターである程度操作に慣れたら、次は実機での練習です。
ただし、いきなり屋外で飛ばすのはリスクが高いため、まずは屋内での練習をおすすめします。
屋内練習のメリットは、風の影響を受けないこと、万が一墜落しても被害が限定的なこと、そして航空法の規制を気にせず練習できることです。
屋内練習では、まず安定したホバリングを目指しましょう。
一定の高度と位置を保ち続けられるようになったら、次は直線飛行、四角形の飛行パターン(スクエア飛行)、8の字飛行などに挑戦します。
5-3. ステップ3:広い屋外での飛行練習と注意点
屋内で基本操作をマスターしたら、いよいよ屋外での飛行です。
ただし、屋外飛行には多くの注意点があります。
まず、必要な許可・承認を取得していることを確認しましょう。
飛行場所は、人がいない広い場所を選ぶことが重要です。
河川敷や海岸、専用のドローン練習場などが適しています。
私がよく利用するのは、地元のドローン練習場で、安全柵が設置されており、初心者でも安心して飛ばせる環境が整っています。
屋外では風の影響を強く受けるため、最初は風の弱い日を選んで飛行することをおすすめします。
また、バッテリーの残量には常に注意し、余裕を持って着陸させる習慣をつけましょう。
私も一度、バッテリー切れで強制着陸させてしまい、機体を破損した苦い経験があります。
さらに、補助者を配置することも検討しましょう。
FPV飛行では周囲の状況が把握しにくいため、補助者が周囲を監視してくれると安全性が大きく向上します。
私も友人と一緒に飛ばす際は、必ず交代で補助者役を務めるようにしています。
6. まとめ:安全にドローンFPVを楽しみ、新しい世界を体験しよう
ドローンFPVの世界は、一度体験すると病みつきになる魅力に満ちています。
一人称視点で空を飛び回る感覚は、他では得られない特別な体験です。
しかし同時に、法律や安全面でのルールをしっかり理解し、遵守することが不可欠だと私は考えています。
本記事で解説したように、FPVを始めるには機体・ゴーグル・送信機といった機材の準備、機体登録やリモートID搭載といった法的手続き、そして場合によっては無線免許の取得や飛行許可の申請が必要になります。
最初は少し面倒に感じるかもしれませんが、これらは全て空の安全を守るための大切なプロセスなんです。
初心者の方には、まずDJI Avataのような一体型キットから始めることをおすすめします。
シミュレーターでしっかり練習し、屋内で実機操作に慣れてから、段階的に屋外飛行へとステップアップしていくのが確実な道筋でしょう。
国家資格の取得も視野に入れると、さらに飛行の幅が広がります。
二等資格であれば、登録講習機関で数日間の講習を受けることで取得可能です。
私の周りでも、資格を取得してから本格的にFPVに取り組み始めた方が増えてきました。
最後に、FPVドローンは決して一人で楽しむものではありません。
地域のFPVコミュニティに参加したり、練習場で仲間と交流したりすることで、より深く楽しめると感じています。
先輩パイロットからのアドバイスは何よりも貴重ですし、一緒に飛ばす仲間がいると、モチベーションも上がります。
ルールを守り、安全に配慮しながら、ぜひFPVドローンの素晴らしい世界を体験してみてください。
きっと、これまで見たことのない景色と、新しい感動が待っているはずです。
参考情報・ソース
